農業共済新聞
花苗を多品目生産
親子で育てる喜び実感
(平成28年6月4週号 トップ)
美咲町打穴下の黒瀬園芸では、黒瀬浩巳さん(65)と息子の隆行さん(33)の2代で花苗を生産している。年間10万本、多品目少量生産でローテーション栽培しており、それぞれが役割分担し、協力しながら収益を上げている。
黒瀬園芸は15年前、浩巳さんが勤めていた障害者施設を50歳の時に退職し、2㌃ハウス1棟から始めた。障害者施設に勤めていた時、重度障害者の人が花苗の生産を簡易で安全に作業できるよう、県内の大型施設などに足を運び技術を学んでいた。現在でも当時の経験を生かし、シンプルな方法で、自動化によりさらに効率的にプラグ花苗の栽培を行っている。
役割分担し年間10万本
2005年9月に開催された岡山国体での需要により、同年に卒業時期だった隆行さんが手伝うようになり、そのまま就農。以降は親子で黒瀬園芸を経営している。
浩巳さんは「最初は、脱サラして気楽にやっていたが、1人は1人。だが息子と2人では3人分以上の働きができる」と笑顔で話す。現在、2㌃のハウス4棟に1品種千株、1棟に1万本の花苗を栽培し、年間10万本の花苗を生産している。
種播きから移植、朝夕の水やりなど、正月に少し休む以外は仕事に追われる毎日だ。広告は一切出していないが、口コミで広まり、迷ってでも直接ハウスまで買いに来る人もいる。
販売先でも高い評価
美咲町物産センターの店内には、町内で取れた旬の野菜や果物、花苗などが販売されている。5月中旬は黒瀬園芸のペチュニア、ベコニア、ダリアなど13種類の花苗が約20本単位で売られていた。同センターの店員は、「株がしっかりしていて、根張りがよく、株元からばっさり切ると2回、3回咲かせて、うまくいけば12月まで花を楽しめる」と話す。9月末からは、葉ボタン、パンジー、ビオラが棚に並ぶ。
浩巳さんは「9割の客は花が咲いた苗を買っていく。花の咲いていない苗を、少し世話をして、どんなふうに咲くのかなと育てる喜びも感じてもらえたらうれしい」と話す。