農業共済新聞
日生諸島の活性化へ
ミ カ ン 狩 り で PR
(平成28年2月3週号 トップ)
岡山県内有数のミカン産地・備前市日生諸島。近年、農家の高齢化に伴い栽培面積が減少し、ミカン狩りの客数も下落傾向にあった。各観光農園を取り巻く状況が大きく変化する中、「日生町みかん生産組合」は「日生みかん」をPRすることで諸島の活性化を図っている。
橋の開通追い風に
「橋の開通は島民の悲願でした」と話すのは、頭島で今川農園(温州ミカン80㌃)を経営する今川亮二さん(77)。頭島町内会では架橋事業のため、1世帯500円を毎月架橋預金として積み立てるなど運動を行い、2008年には備前市へ架橋預金から1千万円を寄付した。
そして、15年4月、本土と鹿久居島を結ぶ備前竃日生大橋(地図参照)が開通。頭島まで無料で渡れるようになった。「今では島民の生活に欠かせない橋です。ミカン狩りのお客さんも増え、本当に良かったと思っています」
今川さんの所属する「日生町みかん生産組合」は諸島の8農園で結成され、全体の栽培面積は9・5㌶。瀬戸内式気候のため日当たりに恵まれており、農薬散布を極力行わず、有機肥料による健康な土づくりを実践している。
有機JAS認証も
組合長を務める下林農園(温州ミカン88㌃、レモン2㌃)の園主・坂口智美さん(48)は「当園のミカンのうち18㌃分と、レモンは全て有機JAS栽培です。味が濃厚だと驚かれるお客さんも多いですよ」と笑顔を見せる。
昨春、多目的テラスを新設し、食事の提供やバーベキューセットの貸し出しを始めた。「ミカン狩りをじっくり楽しんでもらえたら、と思います。来シーズンに向けて新しいスイーツを開発中です」
一方、交通手段が船だけである鴻島の農園は例年より利用客が少なかった。車でのアクセスの可否が大きく影響した形だ。しかし、同組合の会議では、「鴻島の園主たちの「今後もミカン狩り事業に協力して、日生みかんを盛り立てていきたい」という意思が確認できた」と坂口さん。
「橋の開通を機に各農園の置かれた環境は変わりましたが、今後はそれぞれが個性を伸ばし、魅力を発信していくことで、諸島の活性化につなげたいですね。また、のんびり船に揺られて島に向かう情緒もぜひ楽しんでほしいです」と期待する。