農業共済新聞
ハウスモモ 加温栽培
甘さが評判に
(平成28年5月2週号 トップ)
「一本一本の木にそれぞれ個性があって、モモ栽培は楽しい」と笑顔で話すのは、勝央町石生でモモを栽培する石川里江さん(64)。岡山県内で唯一のモモの加温栽培(ハウス)農家だ。石川さんが栽培したモモは「露地栽培のものよりも甘くておいしい」と消費者から好評を得ている。
石川さんのモモの栽培面積は、加温が約13㌃、露地は約60㌃。ハウスだけで2㌧をJA勝英へ全量出荷している。
「はなよめ」「日川白鳳」「白鳳」など多品種を扱う石川さんは、結婚を機に義母の後を継ぎ、24歳でモモ栽培を始めた。それまで栽培経験は皆無だったが、さまざまな勉強会や県の研修会への出席、近隣のモモ農家から教わりながら経験を積んだ。
「ハウスでのモモ栽培のメリットは大きく四つある」と話す石川さん。一つ目は予防にかける手間が少なく済むこと。二つ目は水分調整が簡便であること。三つ目は露地栽培と比較し、糖度が高いこと。そして四つ目は販売価格の高さだという。
一方で、デメリットもある。最大の問題は初期投資費用や、燃料費などのコスト面。ハウスの温度を一定に保つためには加温器が必須となり、燃料費が多くかかっていた。しかし、昨年新しい加温器を導入したことで、燃料費がそれまでの約半分になった。
落下の危険を伴うハウスのビニール張りは難しい作業。そんな中、石川さんはハウスの骨組みを増やし、作業中の足場を多く確保することで、安全性を向上させた。
作業日記で改善点を確認
モモの加温栽培を行う農家が県内では他にいないため、相談できないことが大変だったという石川さんは、モモ栽培を始めてから現在まで、日記を付けることが日課だという。「過去、同時期に何をしていたか、改善すべきところはどこか、日記を読めば思い出せるので重宝している」と話す。
JA勝英営農生活センターの江見哲也さんは、「技術が非常に高い。石川さんが最近取り組んでいる古くなった果樹の植え替えは、ハウス内という限られたスペースで行うことが難しい作業だ。これも石川さんの技術あってのもの。これからも長く頑張ってほしい」と期待を寄せる。
石川さんは、「モモ栽培は子育てに似ている。発送する時はいつも『おいしく食べてもらえよ、頑張れよ』と念じている」と笑顔で話す。